今回は、ADHD(注意欠如・多動症)の患者様が、ストラテラ(アトモキセチン)内服と認知行動療法(CBT)を組み合わせた治療を受けて、症状や日常生活、仕事で改善がみられたケースをご紹介します。
治療のイメージが少しでもお持ちいただきやすくなれば幸いです。
(内容は、個人を特定されないように一部改変しております。)
大学生のケース:Aさん
-
背景
Aさんは20歳の大学生で、幼少期から注意欠如・多動症(ADHD)の症状に悩まされていました。特に大学に入学してから、講義中に集中力を保つことが難しく、課題や試験の準備にも苦労していました。その結果、成績が低迷し、大学生活への不安感が増していました。
-
初診時の症状
Aさんは以下のような症状を訴えていました。
- 講義中に注意が散漫になり、内容が頭に入らない。
- 課題を始めるのに時間がかかり、締め切りに間に合わないことが多い。
- 忘れ物が多く、スケジュール管理ができない。
- 日常生活においても、物事に対するモチベーションが維持できない。
-
治療開始
Aさんには、まずストラテラの内服を開始しました。初期の副作用として軽い吐き気や食欲不振が見られましたが、数週間でこれらの症状は軽減しました。並行して、認知行動療法を開始し、週1回のセッションを行いました。
-
認知行動療法の内容
Aさんに対しては、以下のような認知行動療法を実施しました。
- 時間管理のトレーニング
タイムマネジメント技術を学び、スマートフォンのアプリを活用してスケジュールを管理する方法を指導。
- 集中力の向上
短時間の集中と休憩を繰り返すポモドーロ・テクニックを導入。
- 課題の分割と優先順位付け
大きな課題を小さく分割し、優先順位を付けることで、達成感を感じながら進める方法を指導。
- ポジティブ思考の育成
自己肯定感を高めるために、ポジティブな自己対話と成功体験の振り返りを実施。
- 時間管理のトレーニング
-
経過と結果
治療開始から3ヶ月後、Aさんの症状には以下のような改善が見られました。
- 講義中の集中力が向上し、ノートを取る習慣が身に付いた。
- 課題を小分けにして進めることで、締め切りに間に合うようになった。
- スケジュール管理が改善され、忘れ物が減少。
- 全体的な自己効力感が高まり、大学生活に対する不安が軽減。
Aさんは、その後も治療を継続し、学業成績も向上しました。ストラテラの内服と認知行動療法の組み合わせが効果的であることが確認されました。
社会人のケース:Bさん
-
背景
Bさんは32歳の会社員で、営業職に従事していました。仕事のパフォーマンスが求められる中で、ADHDの症状が原因でミスが増え、上司からの評価が低下していました。特に、顧客との約束を忘れる、提出期限を守れない、会議中に集中力が途切れるといった問題が顕著でした。
-
初診時の症状
Bさんの主な訴えは以下の通りでした。
- 仕事中に集中力を保つことが難しく、ミスが頻発する
- スケジュール管理が苦手で、顧客との約束を忘れることが多い。
- 提出期限を守るのが難しく、仕事の効率が悪い。
- 人間関係においても、短気で感情のコントロールが難しい。
-
治療開始
Bさんにはストラテラの内服を開始し、並行して認知行動療法を導入しました。初期の副作用として一時的な睡眠障害が見られましたが、適応するにつれて改善しました。週1回のセッションを通じて、具体的な対処法を学びました。
-
認知行動療法の内容
Bさんに対しては、以下のような認知行動療法を実施しました。
- タスク管理の強化
タスクリストを活用し、重要度と緊急度に基づいて優先順位をつける方法を指導。
- 集中力の向上
仕事中に集中力を維持するための環境整備と、短時間での集中と休憩を繰り返す方法を導入。
- コミュニケーションの改善
感情のコントロールとポジティブなコミュニケーションスキルを育成。
- ストレス管理
ストレスを感じたときにリラックスするための呼吸法やリラクゼーション技術を指導。
- タスク管理の強化
-
経過と結果
治療開始から3ヶ月後、Bさんの症状には以下のような改善が見られました。
- 仕事中のミスが減少し、上司からの評価が向上。
- 顧客との約束を守ることができるようになり、信頼関係が構築された。
- 提出期限を守る習慣が身に付き、仕事の効率が向上。
- 感情のコントロールが改善され、職場での人間関係も良好に。
Bさんは、その後も治療を継続し、職場でのパフォーマンスが向上しました。ストラテラの内服と認知行動療法の組み合わせが、ADHDの症状管理に非常に有効であることが確認されました。
まとめ
ストラテラ内服と認知行動療法の組み合わせは、大学生および社会人のADHD患者に対して、非常に有効であることは各種研究でも証明されています。これらの治療法は、患者様の個別のニーズに合わせて調整することで、さらなる効果的な症状管理と生活の質の向上を実現します。
ADHDの治療には時間と努力が必要ですが、適切な治療を受けることで、日常生活や仕事、学業において大きな改善が期待できます。ADHDの症状でお悩みの方は、ぜひ当クリニックにご相談ください。
日常生活や仕事、学業で困難を感じている方、その原因がもしかするとADHDかもしれません。ADHDのチェックリストに該当する項目が多い場合、ぜひ一度クリニックにご相談ください。
ADHDのチェックリストはこちら