Ⅰ.自律神経失調症の症状
自律神経失調症は、「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的な病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」(日本心身医学会)と定義されています。
これを分かり易く言い換えますと…
①自律神経の機能障害によって、心と身体に原因不明の様々な不調が現れる。
②病院で検査をしても臓器や器官に病的変化が認められない。
…という意味になります。
「不定愁訴」(ふていしゅうそ)とは、例えば「頭が重い」「気分が落ち込む」「めまいがする」等が、現れたり消えたりする不快な症状なのですが、検査をしても原因が不明なものを呼んでいます。よって、頭痛、肩こり、倦怠感、胃の不調といった辛い自覚症状があるにも関わらず、病院の検査では異常が見つからない…という方は、自律神経失調症である可能性も視野に入れられた方が良いのかもしれません。
自律神経失調症の症状は、その方によって個人差が大きいのが特徴です。そして、身体的な不調だけでなく、精神面における不調を伴うケースも多くあります。
「身体症状」の代表的なものとしては、頭痛や偏頭痛、肩こり、動悸、息切れ、喉の異物感、立ちくらみ、手足の痺れ、腹部不快感、下痢、便秘…等が挙げられます。「精神症状」の代表的なものとしては、イライラや憂うつ感、不安感の増加、好奇心の喪失、集中力・記憶力の低下…等が挙げられます。
「全身症状」の代表的なものとしては、眩暈、夜眠れない、食欲減退、疲れやすく力が入らない、強い倦怠感、冷えやほてり…等が挙げられるでしょう。
Ⅱ.自律神経失調症の原因
自律神経失調症は、その名の通り、自律神経(交感神経・副交感神経)の乱れによって起こります。
自律神経のバランスの乱れを引き起こす大きな原因(2大要因)として、「ストレス」と「不規則な生活スタイル」が挙げられます。そういった意味では、自律神経失調症は、現代の忙しい社会環境が生んだ現代病とも言えるでしょう。
「ストレス」としては、人間関係や環境の変化等の「外的ストレス」と、その方の認知パターンや性格、生まれつきの体質等による「内的ストレス」が考えられます。
「不規則な生活スタイル」としては、慢性的な寝不足、夜更かしや昼夜逆転、習慣的な飲酒や喫煙、朝食抜きといった不規則な食生活等が挙げられます。
これらの原因が複雑に入り組んで自律神経のバランスが崩れた時に、自律神経失調症が起こると考えられているのです。
Ⅲ.自律神経失調症の治療
自律神経失調症は、主に心理的な負荷や不規則な生活習慣、あるはその双方が影響し、自律神経のバランスが崩れることで起こります。
心理的な負荷は「精神的ストレス」に、不規則な生活習慣は「身体的ストレス」になるものです。別の言い方をすると、自律神経失調症は、心と身体が受けたストレスに自律神経が過敏に反応している状態とも言えるのです。
よって、まずは疲れた心身をゆっくり休めることが大切です。日常の睡眠、食事と栄養、運動等の生活習慣をゆっくりと整えていき、自律神経が上手く働きやすい状態に少しずつ戻していきます。
そしてある程度、調子が戻ってきた後の治療には、幾つかの方法がありますので、以下に挙げさせて頂きます。
- 1. 投薬治療:
薬によって辛い症状を緩和させます。漢方薬を用いた治療(漢方療法)を実施することも可能です。医師と十分に話し合われて、薬を用いる理由や効果、起こり得る副作用についても良く理解をしましょう。 - 2. 心理療法:
カウンセリング、自律訓練法、認知行動療法、リラクゼーション法などが含まれます。専門の心理師による治療促進を目的としたものです。心理的要因やストレス因を見つけ、ストレス耐性やストレス対処能力を高め、心身の安定を図ります。 - 3. 理学療法:
マッサージや指圧、温熱療法等がこれに相当します。肩こりや頭痛、手足のしびれといった身体の症状を緩和します(※こちらは心療内科・精神科以外での扱いになります)。
当院では、自律神経失調にお悩みの患者様、お一人おひとりの症状やご希望に沿った治療を提供させて頂いております。漢方薬による治療や、カウンセリング・自律訓練法の実施等をご希望される方は、その旨、診察時にご相談下さい。