こころのペリカン便り

Column

【心療内科Q/A】「地元で休職、通院中です。よくなって東京で復職するので、診断書をください。」

医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)でございます。

当院にご興味下さり、誠にありがとうございます。

 

 

 

Q:「地元で休職、通院中です。よくなって東京で復職するので、診断書をください。」に、お答えします。

 

 

A:大変申し訳ございませんが、復職可能の診断書はすぐには作成できません。

 

 

「東京の会社に就職後に、精神的なトラブルで仕事ができなくなったため、地元に戻った。病院に通院しながら療養を続け、体調がよくなったため、東京に戻ってきて、復職しようとした際に復職可能の診断書が必要と言われた。」というお話は、しばしばお聞きします。

 

体調がよくなられたのは、本当に喜ばしいことです。

特に独身の方は、やはり地元、実家での療養は、ご両親をはじめご家族がいることから安心できたり、食事も自分で用意しなくても食べられることから、具合が良くなりやすいことが多く、東京で休職となった場合には、帰郷をお勧めすることも多いです。

 

ただ、では地元で状態がよくなって、東京に戻ってすぐに復職できるかというと、そこは慎重に考えた方がよいでしょう。

 

当然ながら、東京に戻ってくることで、「いよいよ復職か」という不安緊張を抱きますし、再び単身生活に戻り寂しさを感じたりすることもあります。

食事も自分で用意しなければなりません。

朝、起こしてくれる人もいません。

つまり、生活環境が大きく変わるので、まず東京の生活に「慣れ直す」ことが必要になってくるのです。

 

また、復職診断書を作成する場合、医師によって程度に差がありますが、いわゆる「通勤訓練」をしていただくことも必要です。

通常の就業時の起床時間に起床することから始まり、本来の通勤の時間帯の電車に乗り、図書館等で自主学習したり、運動したりして日中を過ごし、夕方帰宅するという過ごし方を平日の週5日間相当行っていただきます。

(上述は古典的なやり方ですが、現在は新型コロナウイルス感染症の兼ね合いがありますので、事情に合わせて変更することも多いです。)

これを「生活記録表」という1日の生活リズムを記載する表に記入していただき、生活リズムが一定になっていることを確認して、ようやく復職診断書作成となります。

復職診断書作成後に、産業医面談がありますが、この産業医面談で生活記録表の提出を求められることも多く、産業医による厳しいチェックが入り、不十分なら「復職不可」となります。

最近は、従業員の安全配慮義務が強くうたわれておりますので、「なんとなく仕事できそう」では、産業医も企業側も復職を認めないことが多くなってきています。

 

また、別の点でも注意いただきたいところがあります。

復職診断書は、原則的には「休職診断書」を作成した病院、医師が復職可能と判断して作成するものであり、他院、別の医師が勝手に判断して作成することは、無責任な行為です。

今回のように療養場所と復職場所が違う場合には、通勤訓練の必要性から、休職診断書を作成する病院と復職診断書を作成する病院が異なってくることにはなりますが、その際には地元の病院からまず復職可能かの判断を得て、さらに診療情報提供書(紹介状)を作成依頼して、それを東京の新しい病院に提出して、一連の経緯をお話いただき、状況理解したうえで、通勤訓練開始とするのが本筋です。

(ここら辺は、以前に投稿した以下の記事と考え方は同一です。併せてご参照ください。)

https://www.pelikan-kokoroclinic.com/post-2249/

 

以上から、転院での初診時に「復職診断書を作成する」というのは困難となります。

ご理解ご了承のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

今後とも、医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)をよろしくお願いいたします。