こころのペリカン便り

Column

【Q/A】「『会社が原因でうつになった』という診断書は書いてもらえますか?」

当院にご興味下さり、誠にありがとうございます。

 

「『会社が原因でうつになった』という診断書は書いてもらえますか?」というご質問に、お答えします。

 

申し訳ございませんが、その記載は通常の診療所(少なくとも当院)では難しいです。

当院を含めた精神科、心療内科では、多くの患者さんが、「仕事が多忙で」「上司からパワハラを受けた」など色々な仕事の悩みで心身に疲労、ストレスを抱え、来院されます。

皆さん、本当に大変な思いをされておられます。

診療では、そこに共感しつつ、心身の健康を取り戻せるようにお手伝いさせていただくこととなります。

それはそうなのですが、この診療行為と、「『そのような状況が現実にあった』と事実認定する」こと、が同一かとなると、それは異なってきます。

ややこしいのですが、精神科、心療内科の診療行為で扱っているものは「思い」であり、「事実」ではありません。

精神科、心療内科の治療対象は「こころ」ですから、「思い」に対してケアしていくのが、我々の責任です。

極端な話ですが、仮に「そのような事実が実は存在しなかった」と判明したとして、「事実はなかったから、治療できません」となるかというと、当然そんなことはありません。

事実はなかったとしても、患者さんがその思いに苦しんでいるなら、それはケアされるべきです。

つまり、治療において、「事実であるかどうか」は重要ではありません。

診療で何を診ているのか、正確に表現すると、「会社が原因でうつになった」こころではなく、「『会社が原因でうつになった』という思いをしている」こころ、ということになります。

 

そもそも、医師は仕事の現場を見ているわけでありませんし、事実かどうか確認できる立場にありません。

事実認定する権限があるのは、医療機関ではなく、労働基準監督署や裁判所です。

 

お役に立てず申し訳ございませんが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。