休職を考えている方へ
現代社会では、多くの方が仕事のストレスや人間関係に悩みを抱えています。特に、職場の環境や仕事量、特に人間関係が原因で、心身に不調を感じている方は少なくありません。当院にも「会社に行くのがつらい」といったご相談をいただくことが増えています。
メンタル不調を抱えたまま仕事を続けると、ミスが増えたり、集中力が続かなくなることがあり、ますます不調が悪化することがあります。そういった場合、無理をせず早めに専門の医師に相談することが大切です。これ以上悪化しないためにも、ストレスから解放され、しっかりと休養を取ることが重要です。
「休む」ことも立派な治療です
心の不調には、薬やカウンセリングももちろん重要なのですが、職場でのストレスが主な原因となっている場合には「休む」という選択がとても有効です。心や体が悲鳴を上げているときには、ストレス源から一時的に離れることが、回復への大切な一歩になります。仕事に戻る前に、まずは十分に自分自身を癒す時間が必要です。
休職の流れ
1. 医師の診察
まず、専門医が診察し、休職が必要かどうかを判断します。患者様の状況やご希望を踏まえ、適切な休職期間を決定します。まずは少なくとも2週間、通常は1か月間程度は療養することが推奨されます。
2. 休職診断書
診察の結果、休職が必要と判断された場合、「休職診断書」が発行されます。この診断書には、病名や休職期間が記載されます。必要に応じて、会社指定の書式に合わせた内容で記載することも可能です。
3. 職場への提出
診断書を職場に提出し、休職について会社と相談をします。通院が難しい場合、郵送で診断書を提出することもできます。
4. 休職期間中の通院
休職中は、1~2週間に一度の頻度で通院し、状態を確認します。必要に応じて休職期間を延長したり、復職のタイミングを見極めます。休職中も、リハビリとして日常生活のリズムを整えたり、少しずつ興味のあることに取り組むことが大切です。
休職中の過ごし方
1. まずはしっかり休む
最初の期間は、仕事のことを一切考えず、心と体をしっかり休ませましょう。自分自身をリセットする大切な時間です。とにかく寝ることが重要です。昼間も、あまりに倦怠感が強い時は、昼寝も悪いことではありません。
2. 好きなことに集中する
十分に休んで「少し元気が出てきた」と感じたら、無理のない範囲で好きなことに取り組んでみましょう。家事をしたり、外を散歩することから始めると良いでしょう。
散歩は頻度を意識しましょう。最初はできるときだけでよいですが、慣れてきたら、徐々に頻度を上げて、最終的には毎日行えることが目標となります。
オフィスワーカーの1日平均歩数は約7000歩という研究もあり、7000歩を通常の歩行で満たすには約1時間強必要となります。
つまり、1日1時間強の散歩を問題無くできるようになると、体力面においてはかなり回復していると言えるでしょう。
3. 復職に向けた準備
体調が整ってきたら、徐々に仕事に関連する活動も取り入れていきます。読書やパソコンを使った作業など、少しずつリハビリをしていきましょう。
最初は活字が頭に入らないことも多いですが、焦る必要はありません。徐々に練習していくことで、元の集中力、思考力などが戻ってきます。
4. 復職への相談
「また働きたい」と思えるようになったら、職場に復職の相談を始めます。「働かねばならない」と自身を追い立てるような考え、気持ちで、復職することは望ましくありません。自分が再び仕事をしているイメージを自然に持てるようになることが大切です。また、配置の調整や、最初は時短勤務にするなど、無理なく復職できるように環境を整えていきましょう。
休職中の収入について
休職中の収入について不安を抱えている方も多いかもしれませんが、「傷病手当金」という制度があります。この制度では、休職中も給与の約2/3が健康保険から支給されます。支給期間は最長1年半で、会社が加入している健康保険の被保険者であれば、正社員だけでなく、アルバイトやパートの方も対象となります。
申請には、医師の診断書が必要ですので、もしすでに休職を考えている方は、できるだけ早めに医師の診察を受けることをお勧めします。また、定期的な通院も必要となるため、受診を怠らないようにご注意ください。
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休職は心や体の回復にとってとても大切な時間です。無理をせず、まずは自分を大切にすることを優先してください。そして、復職への準備は焦らず、ゆっくりと進めていきましょう。もしお困りの際は、いつでもご相談ください。
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監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)