コラム

Column

【医師が解説】心臓病について説明します!

※当院は、循環器の診療はできません。診断、治療等は専門病院を受診してください。

高血圧

  • 軽い高血圧には、ほとんど何の症状も見られません。しかしながら、重度の高血圧を長期間治療しないでいると、頭痛、めまい、息切れ、疲労感、不安感などの症状が現れます。
  • 高血圧の重要な問題として、長時間続いている高血圧では心臓や血管、腎臓などに損傷を与える可能性があります。長時間続く高血圧によって、血管に動脈硬化を生じると、脳では脳出血や脳梗塞、心臓では狭心症や心筋梗塞、心肥大などの合併症が問題になります。腎臓では腎機能低下が進行し、腎不全から人工透析に至る可能性があります。合併症は致命的であるため、そうならないように予防することが高血圧治療の重要な目的になります。
  • 治療は、患者様を低リスク、中リスク、高リスクの3群に分類したうえで、生活習慣の修正を指導しつつ、降圧薬による治療を開始します。比較的長期にわたり降圧薬を飲み続ける必要があり、患者様御自身の治療意欲が求められます。そのため、家庭において自己血圧測定を行い、治療効果を患者様御自身で自覚するように推奨されます。
  • 診断に際しては、継続的な血圧測定が重要となり、それを基準に重症度を測定して、その他のリスク因子を加味しながら治療方針を決定することになります。はじめに、収縮期血圧および拡張期血圧から、高血圧の重症度(血圧値分類)を判定します。血圧値の分類は正常高値血圧、Ⅰ度高血圧、Ⅱ度高血圧、Ⅲ度高血圧などに分けられます。
  • 次に、血圧以外のリスク因子(合併症を来しうる危険因子)を加味して、低リスク、中リスク、高リスクの3群に分類し、その分類に従って治療方針(高血圧管理計画)を立てます。

 

  • 薬物治療に先立って、生活習慣の修正・見直しを行います。具体的には食事から摂取する塩分量の減少(減塩)や栄養素の見直し、体重減少、運動の促進、節酒、禁煙などを行います。具体的な生活習慣の修正項目は、①塩分摂取量6g/日未満、②野菜・果物の積極的摂取、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える、魚(魚油)の積極的摂取、③BMI(体重(kg)÷[身長]²)25未満、④心血管病のない高血圧患者様が対象で、有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う、⑤エタノールで男性20~30mL/日以下、女性10~20mL/日以下、⑥禁煙、受動喫煙の防止も含む、などがあります。
  • それでも血圧が降圧目標値へと達しない場合に、降圧薬(飲み薬)を用いた薬物療法を開始します。この際、薬物療法の開始をいたずらに遅らせることがないよう留意します。
  • 主な降圧薬にはカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿剤、β遮断薬などがあります。層別化したリスク(低・中・高)に応じて、低用量の降圧薬を1剤もしくは2剤で治療開始し、常用量へと増量するのが一般的です。降圧が不十分であり、高圧目標へと到達しない場合には、薬剤を変更するか、3~4剤を用いた併用療法へと進みます。併用療法では、可能な限りの相乗効果を期待しつつ、また、お互いの薬剤の決定を補い合う組み合わせを考えます。各降圧薬ごと、合併症に対する強みを持っているので、それを考慮しながら優先処方を考えます。
  • 糖尿病や慢性腎臓病(CKD)を合併した高血圧患者様やご高齢の高血圧患者様では、致命的な合併症への進展が懸念されます。それを予防するために、ふさわしい薬剤の組み合わせによって厳格な降圧療法を実施する必要があります。

 

心不全

  • 心臓は栄養分や酸素を含んだ血液を全身へ送り出すポンプの働きをしています。このポンプの働きが低下して、全身が必要とする血液を十分に送り出すことができなくなった状態を心不全と呼びます。
  • 心不全とは、心臓が弱った状態のことを指します。なお、心不全には主に次のように分類が可能です。
  • 急性心不全とは、急性心筋梗塞などが原因となって、呼吸困難、起坐呼吸、血圧低下などの心不全症状が急速に出現したもので、緊急入院が必要です。慢性心不全は心臓弁膜症や心筋症などが原因となって心臓の働きが低下し、運動時の動悸、息切れ、呼吸困難や足のむくみなどが持続しているものをいいます。症状が軽くて安定していた慢性心不全が何かのきっかけで急に増悪した場合(急性増悪)、急性心不全と同様に緊急入院治療が必要です。
  • 心不全は予防が大切です。例えば、心不全の主な原因となる心筋梗塞症を起こさないよう、普段から禁煙、減塩、肥満防止、適度な運動を心がけます。また、心不全の増悪原因(感染、疲労、頻脈性不整脈、貧血、服薬中止、心筋虚血、血圧コントロール不良など)を明らかにすることで、その対策・予防をすることが重要です。すなわち、体重管理や水分・塩分制限を守り、過労を避け、風邪をひかないように注意します。
  • 心不全は、その症状や経過から比較的容易に診断が付きます。ただし、心不全を来している原因を突き止めないと、治療に取り掛かることができません。そこで、心臓関連の様々な検査を行います。まずは、胸部レントゲン検査を行い、心臓の拡大や肺のうっ血(水が溜まった状態)を見て心不全の存在を判断します。同時に心電図を取れば、リズムや左室肥大あるいは狭心症・心筋梗塞などが分かります。血液検査によってBNPを調べれば、うっ血性心不全の有無と程度が分かります。心筋梗塞の時にはCKやCK-MB、トロポニンTなどを測定して梗塞の有無や大きさを判断します。心エコーは、心不全の診断や原因の究明に大変役に立ちます。収縮機能不全なのか、拡張機能不全なのかもわかります。心不全の原因が分からなければ、最終的に心臓カテーテル検査(造影検査)が必要となる場合があります。冠動脈狭窄などが正確に診断でき、心筋の一部を取って顕微鏡で調べることもできます。その他、核医学検査やMRIを用いて、心筋の生存度合いや心筋血液などを調べることもあります。
  • 心不全の薬物療法では、急性心不全と慢性心不全とに区別して考えます。心不全治療の目的も、単に症状を短絡的に改善させるだけでなく、長期的に見て症状悪化の頻度を下げ、死亡リスクを低減させるものでなければなりません。従来、ジギタリスなどの強心薬に加え、利尿薬が心不全治療の第一選択でしたが、最近では、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害薬(ACE阻害薬やARBなど)を用いて心保護をはかる治療が増えています。また、過去には禁忌とされていたβ遮断薬を用いて、心負荷を減らす治療法も一般的になってきました。
  • 慢性心不全の主な病態は、左房圧の上昇、低い心拍出量に基づく左心不全症状、浮腫・肝腫大などの右心不全症状です。これらの症状や所見を的確に評価して、呼吸器疾患や腎不全、肝疾患、貧血によるものでないことを鑑別しながら治療に進みます。慢性心不全の治療では、自覚症状およびQOLを改善させることに加えて、心不全増悪による入院の減少や心不全進行の抑制を目標とします。基礎心疾患に対する治療が可能な場合には、基礎心疾患の是正が必要不可欠な根本的治療です。慢性心不全の治療の基本は薬物療法であり、その重症度によって治療薬物を選択します。適切な管理を行っても効果不十分な場合には、非薬物療法も考慮されます。なお、睡眠障害を合併した難治性心不全に対しては、陽圧呼吸療法もしばしば有用とされています。
  • 急性心不全は、心臓に器質的・機能的異常が生じて、急速にポンプ機能が低下し、主要な諸臓器への血液供給が不全を来した状態です。緊急を要するためにCCUに収容して、積極的治療を展開します。ときに、心臓カテーテル検査(スワンガンツカテーテル)によるガイド下での治療を行います。血行動態を改善するため、米国ではカテコラミン製剤を中心とする強心薬が使用されています。一方、日本ではカテコラミン製剤以外にも、各種強心薬、血管拡張薬、利尿薬などの薬剤が使用可能となっています。急性心不全治療の基本はカテコラミン製剤ですが、長時間投与に伴う耐性や反応性低下、血管拡張作用の不足などの問題点も指摘されています。特に、心機能低下に伴いβ受容体メカニズムに変化が生じた状態では、カテコラミン製剤の有効性が低下するものと考えられます。そこで、強心作用と血管拡張作用を併せ持つPDEⅢ阻害薬などの新規薬剤を処方することもあります。それらには、カテコラミン製剤よりも効率の良い血行動態改善作用が期待できるものとして注目されています。

 

 

狭心症

  • 冠血流(心臓を養っている血管を流れる血流)の絶対的、あるいは相対的低下によって、心筋が一過性に虚血に陥ることにより生じる、特有な胸部不快感(狭心痛)を主症状とする臨床症候群です。
  • 代表的な発作症状としては、胸の奥が痛い、胸が締め付けられる、胸が焼け付くような感じなどがあります。多くは胸部の症状として現れますが、上腹部(胃の辺り)や背中の痛み、のどの痛み、歯が浮くような感じ、左肩から腕にかけての痺れや痛みとして感じることもあります。症状は軽いものから強いものまで多彩ですが、糖病病を併発していると症状を軽く感じることが多く、要注意です。
  • 具体的には、血管狭窄(血管の内腔が狭くなること)により、心臓の筋肉に十分な血流や酸素が送り込めないときに胸の痛みが起こります。血管狭窄の原因の大多数は、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧などに引き続いて起こる動脈硬化です。その他、血管攣縮(血管の痙攣)も血管狭窄の原因となります。狭心症が発作の原因や発作の起こり方によって、いくつかの型に分類されます。①主に冠動脈が詰まって起こるタイプと、②冠動脈の攣縮によって起こるタイプがあります。①のタイプには、血管狭窄は比較的軽度~中等で運動時などに症状が出現する労作性狭心症、発作の起こり方が一定しており労作性狭心症の大部分が属する安定型狭心症、血管狭窄が極めて高度になったもので心筋梗塞に進展する可能性が高い不安定狭心症があります。②のタイプには、血管の痙攣によって発作が起こり労作とは関係なく夜間や明け方に多く起こる異型狭心症と、血管狭窄が極めて高度で血管の痙攣による発作が含まれる安静狭心症があります。
  • 狭心症の診断には、安静時心電図、運動負荷心電図、ホルター心電図、運動負荷心筋シンチグラフィ、心臓カテーテル検査(冠動脈造影)および、症状が似ている病気との鑑別診断にて行われます。
  • 狭心症による胸痛の特徴としては、痛みというよりも「胸部圧迫感」、「胸苦しい感じ」と訴えることが多いこと、胸骨下部を握り拳で押さえつけたり、片手で鷲掴みにする動作を示すことが多いこと、持続は10秒~10分程度が多いこと、肩や頸部、上肢の尺骨側、心窩部などに放散することもあること、安静にすると10分以内に治まることが多いこと、ニトログリセリンを舌下投与すると2分前後で軽快することなどが挙げられます。
  • プライマリ・ケアの現場で遭遇する胸痛患者の多くは、狭心症でない可能性があります。そうしたケースでは比較的安全に運動負荷を行えるので、患者様御本人が狭心症を強く心配しているようならば、積極的に運動負荷試験を実施します。なお、狭心症に似た症状を呈するものとして、肋間神経痛、逆流性食道炎、胃潰瘍、急性胆嚢炎、膵炎などが挙げられます。狭心症でない胸痛の特徴としては、持続が5秒以内か15分以上で、部位が胸骨裏面以外のことが多いこと、強い不安の表情を見せながら心尖部を差し、その部位に瞬間的な鋭い痛みを訴えること(→心臓神経症である可能性が高い)、深吸気時に痛みが増強すること(→胸壁・胸膜・心膜の痛みを考慮する)、身体を前屈させたり捻ったりすると痛みが増強すること(→筋肉や神経に原因があることが多い)、肋骨下縁に沿って指で押さえると痛みが増強すること(肋間神経痛を疑う)、などがあります。
  • 診断では心電図所見を重要視します。ただし、発作時には異常を認めても安静時で正常なことが多く、そのため運動負荷心電図が多用されます。運動負荷をかける方法には、階段昇降(マスター法)、ランニングマシン(トレッドミル法)、自転車こぎ(エルゴメーター法)などがあります。血管が痙攣する冠攣縮型の異型狭心症では、小型の機械を装着して日常生活における24時間の心電図を記録します。
  • 血管の狭窄が強い場合には、運動負荷心筋シンチグラム(放射性同位体元素を用いて、運動負荷前後で心筋内に十分血流が足りているかどうかを調べる検査)を行います。加えて、経皮的冠動脈形成術や冠動脈バイパス手術などを行う際には、心臓カテーテル検査(冠動脈造影)を追加します。
  • 経過が安定しており、あまり発作が出現しないか、出現しても一定条件化のことであり、発作出現がある程度予測可能な患者様であれば、それは軽症なことが多いといえます。そうしたケースでは、1~2剤でコントロールが可能と考えられます。
  • 安定型労作性狭心症の発作時の治療として、安静にしても症状の改善を見なければ、硝酸薬(ニトログリセリン)の服用を行います。この際、硝酸薬を5~10分ごとに3回用いても改善が得られなければ、心筋梗塞への移行を軽快しながら速やかに病院を受診します。非発作時の治療としては、心臓の負担を軽減する観点から、β遮断薬の投与を行います。ただし、経過によっては冠攣縮型の可能性を考慮しつつ、カルシウム拮抗薬の併用を考慮します。また、冠動脈内血栓を予防する目的で、低用量のアスピリンを処方するケースもあります。
  • 冠攣縮性狭心症(安静時狭心症、異型狭心症)の治療に際しては、冠攣縮性狭心症であることの診断をしっかりと行います。発作時には、労作性狭心症と同様に対処します。非発作時には硝酸薬とカルシウム拮抗薬の投与が中心となります。
  • 血管が高度に狭窄した重症の不安定型狭心症が疑われる場合には、CCUに収容して心筋梗塞に準じた安静度と治療が必要になります。新規発作型の場合は、未治療であるため薬物療法に反応が良いものと考えられます。具体的には、抗血小板薬、硝酸薬、カルシウム拮抗薬、β遮断薬などを用いて治療します。増悪型の場合は、すでに狭心症の治療が行われており、それにもかかわらず増悪したことから、心筋梗塞への移行も考えられます。きわめて要注意な状態と考えます。したがって、ニトログリセリンの持続点滴や抗凝固療法などを速やかに開始します。運動負荷心電図は危険なことから禁忌とし、早期に心臓カテーテル検査(冠動脈造影)を実施します。その結果によっては、経皮的冠動脈形成術などのカテーテルによる治療や冠動脈バイパス手術といった外科的治療を考慮します。非ST上昇型心筋梗塞は心内膜下梗塞とも呼ばれるもので、不安定型狭心症が心筋梗塞に進展しかかっている途中の状態とも考えられます。よって、狭心症治療を必要十分に行いながら、必要に応じてカテーテルなどによる治療なども考慮します。

 

心筋症

  • 心筋症は「心臓の機能不全を伴う心筋の疾患」と定義され、頻度の高いものに肥大型心筋症と拡張型心筋症、および頻度の低い拘束型心筋症の3つが知られています。
  • 肥大型心筋症は心筋が異常に厚くなるもので、遺伝的要因の関与が推定されています。一般的には予後良好ですが、一部では突然死との関連が問題になります。若年発症例、病態の悪化が早い例、家族内に突然死がある例などでは経過が良くありません。拡張型心筋症の発症のメカニズムについては、いまだに十分には明らかにされていません。ただし、現在ではウイルス感染、免疫異常、遺伝子異常などが原因として考えられています。心内腔が拡大することで心筋収縮力を保てなくなり、末梢の血流不足を起こしたり、肺や末梢に血液が溜まって心不全を起こします。
  • 心筋症は無症状のことが多いのですが、肥大型心筋症では動悸、胸部圧迫感などを訴えることがあり、心機能が低下した拡張型心筋症では心不全症状を呈します。無症状の場合でも、健診などの心電図、あるいは胸部単純写真から心筋症と診断されることがしばしばあります。拡張型心筋症は、心不全を発症すると経過が悪く、内服治療の継続と共に、心不全に対する一般的注意として減塩、過労を避けることなどが重要となります。
  • 診断のきっかけは身体所見、心電図、胸部レントゲン写真などです。心筋症を疑えば、心エコーが診断の決め手になり、それによって心筋の厚さや内腔拡大の程度、心筋収縮力などを比較的短時間に診断できます。
  • より正確な診断をするためには、心臓カテーテル検査を行い、冠動脈の異常を調べます。さらに、心臓の組織を検査するために、ごくわずかな組織を採取する心筋生検をすることもあります。最近では心臓MRIも診断に有効とされています。また、合併症として重症心室性不整脈を認め、それが心臓性急死の原因となりえるので、ホルター心電図なども重要な検査になります。心機能が低下すると、それに従って運動する際に息切れなどの症状が出現します。この運動耐用能を調べるために、運動負荷試験(トレッドミル検査)をおこなうこともあります。
  • 心筋症の多くは特発性、すなわち原因不明な疾患のため、その病気に対して特異的な治療法はないのが実情です。そこでまず、一般的には症状に対する薬物治療が選択されます。慢性心不全の状態では、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害薬(ACE阻害薬、ARB、アルドステロン受容体拮抗薬)が主に用いられます。なお、それらの薬剤には病気の経過を改善するとのデータがあり、速やかな投与開始が望ましいとされます。また、肥大型心筋症ではβ遮断薬などが処方されます。

 

不整脈

  • 不整脈には多種多彩な病態が含まれています。主なものは、徐脈、頻脈、および期外収縮の3つになります。徐脈は心臓を動かすための電気信号が作られなくなったり、信号が途中で途切れたりして発生します。対して頻脈は心臓を動かすための電気信号が異常に早く作られるか、信号の通り道が正常ではない場所にできて、そこを電気が走るために発生します。期外収縮では脈が飛んだり抜けたり、予定外に現れたりします。このことは正常でない場所から、心臓を動かすための電気信号が予定よりも早く発生するために起こります。この異常な電気信号が心房で生じた場合を心房性期外収縮(上室性期外収縮)、心室で生じた場合を心室性期外収縮と呼びます。
  • 不整脈の診断と治療には専門的知識が必要になることから、循環器専門医の診断を仰ぎます。特に、迅速な治療が必要となる病態(例えば、血行動態の破綻を来すような頻脈性不整脈や眩暈、息切れなどの症状を伴う徐脈性不整脈)では、速やかに循環器専門医との連携を図ります。
  • 不整脈の診断は、心電図の所見を基本に行われます。動悸で病院を訪れ、安静時の心電図で異常を認めない場合には、24時間ホルター心電図を用いて不整脈の有無や種類を確認するとともに、その重症度を判定します。不整脈の診断には、安静時心電図や24時間ホルター心電図のほか、運動負荷心電図なども有用とされています。自転車をこぐなどの軽い運動をしながら、心電図検査を行います。なお、アブレーションなどの非薬物療法の適応を判断する際には、電気生理学的検査を必要とします。不整脈の原因として最も多いものは、年齢に伴うものや、体質的なもの、つまり心臓病には関係しないものです。ストレスや運動不足、疲労などでも不整脈は起こりやすくなります。しかし、すでに心臓の病気があると、二次的に電気系統の異常が生じて、不整脈が出やすくなります。したがって、不整脈が発生している原因を探ることが重要です。
  • 基礎心疾患を有さない患者様に見られる、単形成の期外収縮は、ほとんどのケースで薬物療法などの治療を必要としません。ただし、期外収縮に一致して自覚症状が非常に強い場合や、頻度が高くて血行動態に悪影響している場合には薬物療法が必要となります。治療が必要な場合、まず心機能を評価して、それが中等度以上に低下していなければβ遮断薬を処方し、効果が不十分であればナトリウムチャネル遮断薬を処方します。
  • 基礎心疾患のない場合、3連発以上と数が多くても単形性非持続型心室頻拍であれば基本的に治療は不要とされています。しかし、症状が強く、治療を必要とする場合には、期外収縮のQRS波形によって処方薬剤を選択します。一方、基礎心疾患を伴い、かつ症状が強くて心室性期外収縮の治療を必要とする場合には、心筋梗塞の有無や心機能などを評価しつつ処方薬剤を選択します。
  • 明らかな原疾患が確認できない心房細動を孤立性心房細動と呼びます。治療は除細動、再発予防、レートコントロール(心拍数調整)、抗凝固・抗血小板療法に分けられます。除細動は発症から1年以内の患者様が適応となります。除細動を行う際には、前もって塞栓症を予防するためのワーファリン抗凝固療法を3週間以上継続し、除細動後にも4週間継続します。
  • 心房細動では、心房細動そのものに対する治療のほか、抗血栓(抗凝固・抗血小板)療法も必要となります。心房細動によって血液の流れが穏やかになると、たとえ心臓内であっても血液の塊(血栓)が生じやすくなります。特に、左心耳内の血液のよどみは高度で、血栓ができやすい場所とされています。左心耳に形成された血栓は時々流れ出し、また形成されるということを繰り返します。この血栓が脳につまれば脳梗塞に至ります。脳梗塞の1/4~1/3が心臓由来(大部分が心房細動)といわれています。心房細動による脳梗塞は、その原因が持続していることから、何回でも再発する危険性があるため、確実な予防が必要です。脳梗塞を予防するため、血栓ができにくくなるお薬を処方します(抗血栓療法)。なお、脳梗塞など動脈塞栓リスクの高い人には、ワルファリン治療が原則とされています。