痛風とは
痛風は尿酸が身体の中にたまり、それが結晶になって激しい関節炎を伴う症状を引き起こす病気です。血液中の尿酸値が上昇(この状態を高尿酸血症と呼びます)し、飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じます。この結晶を白血球が処理する際に痛風発作(急性関節炎)を発症すると言われています。血漿中の尿酸 7.0mg/dlを正常上限とし、これを超えるものを高尿酸血症と定義しています。
高尿酸血症・痛風の治療目的は痛風関節炎の発症を防ぐことです。尿酸値 4.6-6.6mg/dlにコントロールしたときが最も発症率が低いというデータがあります。尿酸沈着による併発症である腎障害や尿路結石を発症、進展させないことが重要です。高尿酸血症・痛風には高脂血症、高血圧、糖尿病または耐糖能異常、肥満などの生活習慣病が効率に合併することが知られており、こうした合併症が虚血性心疾患や脳血管障害の発症率を高くしていると考えられています。そのため、尿酸値のコントロールをだけでなく、合併症に対する十分な配慮も必要になってきます。その上で、尿酸値を6mg/dl以下にコントロールすることが望ましいとされています。診察時には、まず痛風関節炎に対する治療を行って痛みを取った後、尿酸降下薬を選択します。同時に、合併する生活習慣病や併発する腎障害や尿路結石などに対して生活指導や食事療法、尿路管理を行っていきます。
痛風は起きる前に血液中の尿酸が高い状態が長く続きます。高尿酸血症を放置すると、ある日、突然足の親指の付け根などの関節が赤く腫れて痛みだします。「痛風」という病気の名前の通り、「風が吹いても痛い」程の強烈な痛みと言われています。発作的な症状なので痛風発作と呼びます。痛風発作は大抵の場合、1週間から10日程経つと次第に治まって、しばらくすると全く痛みや腫れがなくなります。痛風発作は炎症を抑える薬を服用すると比較的早く治まります。ただし、多くの場合、1年以内に同じような痛風発作が起こります。痛風発作を繰り返しているうちに、足首の関節や膝関節まで腫れたり、発作と発作の間隔が短くなってきます。また、関節だけでなく関節の周囲に結節ができたり、尿路結石ができることがあります。高尿酸血症の状態が続くと、尿酸結石が腎臓に生じ、腎機能が悪化して腎不全となります。最終的には重症の慢性痛風になる可能性も高いので放置するのは危険です。高尿酸血症の原因は様々です。暴飲暴食、肥満、激しい運動、腎機能の低下などと考えられています。
また、尿酸値の高い方は心血管障害や脳血管障害を発病する可能性が高いことが分かっています。そのため、尿酸値以外の動脈硬化のリスク因子にも注意する必要があります。
痛風の初期症状
痛風の症状は急激に発症し、激痛と共に関節が腫れあがることが特徴的です。関節が真っ赤に腫れて、夜間に痛みが強くなることがよくあります。「足の親指のつけ根が急に赤く腫れて痛くなった」というのが典型的なパターンです。
痛風の痛みは急激に始まりますが、夜間や早朝に発症することが多いです。これは身体が冷えることで関節内の尿酸結晶が増えるためと言われています。
痛風は特定の場所や関節で症状が現れることが多く、最も代表的な場所は足の親指のつけ根、第一中足関節です。足首や膝関節でも起こることがあります。足首は関節の動きが多く、歩行などの際に負荷がかかりやすいため、痛風の症状が現れやすい関節です。手に関しても、手の親指のつけ根や手首で発作が起こることがあります。
耳介に痛風結節ができることや尿路結石ができて尿路結石による痛みや血尿が生じて気が付く方もいます。
発作中はできるだけ患部を安静に保ち、冷却してください。また、お酒を飲んでいる場合は禁酒してください。発作の激痛のピークは24時間以内に治まりますが、痛みは2,3日続きます。治療しなくても、10日程で症状は治まります。激痛は一時的なものですが、これで治ったと思い込んで治療を受けずに放置しておくと、血液中の尿酸が高い状態が続いて症状がさらに悪化するケースもあります。痛風発作が起こったときは、できるだけ早く医師の診察を受けてください。
通常は血液検査を行って血中尿酸値と臨床症状から診断します。痛風発作が起きた直後では尿酸値が正常なこともあります。尿酸値が基準値の7.0mg/dlを超えると、溶けきれなくなった尿酸の結晶化が始まります。
尿酸は絶えず体の中で作られています。食事から摂取するプリン体が体内で尿酸になるため、プリン体を多く含む肉、乳製品などの食品を続けて多量に摂取するのを避けて痛風を予防しましょう。尿酸が体内で作られないようにするか、内服薬で血中尿酸値を下げる薬を飲む必要があります。そのためにも、定期的な血液検査が必要です。また、痛風発作が起こらないからと言って薬を勝手に止めるのは危険です。薬を自己判断で止めてしまって再発作を起こす方が非常に多くいます。
プリン体の摂取が過剰になると体内で尿酸の生成が増加するため、プリン体が多く含まれる食べ物には注意が必要です。プリン体は肉類、魚介類に多く含まれています。肉の中でも特に内臓系に多く、鶏レバーや豚・牛レバーに多く含まれています。また、鳥の皮や串カツ、唐揚げなどの揚げ物にも注意が必要です。魚介類ではイワシやアジなどの青魚、エビやカニ、貝類、干物、内臓系の白子、アンコウの肝などに多いです。プリン体は水に溶ける性質があるので、プリン体を多く含む食材が入ったスープやゆで汁にも気をつけましょう。清涼飲料水などに含まれている果糖は体内で分解される際に尿酸値を上げると言われています。果糖はもちろん、果糖とブドウ糖が組み合わさった白砂糖も控えめにしましょう。ビールや焼酎にはプリン体が多く含まれており、摂取を控えることが望ましいでしょう。
健康のためには、プリン体が多く含まれる食べ物の食べ過ぎを避けて、バランス良く摂取することが重要です。プリン体は1日に400mgの摂取が目安とされています。プリン体が多く含まれる食べ物は1回に食べる量を減らしたり、他のプリン体の多い食材とは組み合わせないようにしましょう。尿酸値を下げる働きのある、乳製品やビタミンCを多く含む食材の摂取を心がけると良いでしょう。また、尿酸値が高まると尿が酸性に傾きやすくなり、尿酸が排出されにくくなります。尿をアルカリ化する野菜やきのこ、海藻をしっかり摂ってください。
痛風を予防・改善するためには、生活習慣の改善が重要です。食べ過ぎ・飲み過ぎに注意をすること、肥満を改善すること、プリン体を多く含む食品やアルコールを控えることなどです。尿酸の排出を促し、痛風発作を予防するために、水分を十分に摂ることが必要です。水分は甘いジュースやアルコール飲料ではなく、水や甘くないお茶で摂るようにしましょう。2L以上を目標に摂取すると良いでしょう。アルコール自体に尿酸値を上げる作用があるため、アルコールの飲み過ぎは危険です。日本酒なら1合、ビールなら500mlまでにしましょう。適度な運動を行うことも大切ですが、すでに高尿酸血症を発症している場合は、激しい運動をした後に一時的に尿酸値が上がるため、痛風発作を起こしやすくなるので注意が必要です。息を堪えて行う無酸素運動ではなく、おしゃべりをしながらでも出来るような有酸素運動がお勧めです。ウォーキングやストレッチなどで肥満やストレスの解消を行いましょう。肥満体はプリン体を合成しやすく、尿酸の排出機能が低下する傾向にあるため、適切な体重に戻すことが重要です。また、ストレスは尿酸値を上げると言われているため、ストレスを溜め込まないようにしましょう。