医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)でございます。
当院にご興味下さり、誠にありがとうございます。
Q:「加味逍遙散(かみしょうようさん)とはどういう漢方ですか?」に、お答えします。
A:生理前症候群(PMS)や更年期障害に用いられる代表的な漢方です。
女性三大漢方薬の1つです(他は、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸です。)
不眠、イライラ、肩こり、倦怠感、便秘、冷え性、月経不順、月経困難などに用いられます。
エキス製剤の番号は24番です。
漢方薬は、「なんとなく体に優しそう」というイメージもあり、とっつきやすいところがメリットかと思います。
どうしても味が苦いのと(これも漢方によりますが)、基本的には粉であることを乗り越えていただけるのであれば、治療の選択肢の1つになると思います。
漢方薬は、保険収載(保険適応されるもの)されているものだけで100種類以上あり、心療内科、精神科といったメンタルの領域で有名な漢方もいくつもあります。
<分類>
柴胡桂枝乾姜湯は、柴胡剤の1つとして分類されます。
柴胡剤とは、柴胡が入っている方剤(処方)を言います。
柴胡(さいこ)は生薬の1つで、漢方薬を知るうえで大変重要です。
セリ科のミシマサイコ、またはその変種の根です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3#:~:text=%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3%EF%BC%88%E4%B8%89%E5%B3%B6%E6%9F%B4%E8%83%A1%E3%80%81Bupleurum,%E3%81%AF%E3%82%BB%E3%83%AA%E7%A7%91%E3%81%AE%E5%A4%9A%E5%B9%B4%E8%8D%89%E3%80%82
Wikipediaにもあるように、この学名の由来はまさに日本で、ミシマとは現在の静岡県の三島に由来します。
ただ乱獲が原因で、現在日本原産のものは少なく、輸入が多くなっています。
効能は、配合によって異なり、大変幅広いのですが、特に精神領域において、疏肝解鬱といって、肝気気滞を開通させる効果があります。
目印は、肋骨の下の痛み、苦しみ、圧痛で、これを胸脇苦満(きょうきょうくまん)と言います。
特に右側の肋骨の下には肝臓がありますので、柴胡は肝臓に作用して、その痛みをとり、滞っていた気の流れを開通させ、精神安定を目指すわけです。
解毒作用とも言え、体質改善にもつながります。
西洋医学の病名で言うところの、肝機能障害、肝炎、肝硬変、胆嚢炎、胆石などの肝臓の疾患に始まり、肋膜炎、膵臓疾患、肺疾患、リンパ腺炎、そして、胃酸過多、嘔気、嘔吐、食思不振、精神不安、不眠症などの精神領域まで、幅広く用いられます。
<証>
加味逍遙散は、少陽病の虚証に適しています。
ここで少陽病を簡単に解説します。
漢方の原典である傷寒論(しょうかんろん)では、急性病(熱病)の経過を6つの段階に分けており、これを六病位、または三陰三陽といいます。
三陽とは太陽病、陽明病(ようめいびょう)、少陽病の3つ、三陰とは太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けっちんびょう)の3つです。
熱病の初期は、太陽病の形で発病し、少陽病または直接陽明病に変化し、さらに三陰に進行すると考えられています。
太陽病とは、「脈浮、頭項強痛、悪寒す」(傷寒論)とあるように、脈が浮き(脈診等で判断)、頭から首が強く痛み、悪寒がする状態を指します。
このようなステージなら、漢方の代表である葛根湯などが適しています。
少陽病は、この太陽病の次のステージで、「口苦く咽乾き、目眩(めくるめく)なり」(傷寒論)とあるように、口が苦い、のどが渇く、めまいがしてふらふらする状態を指します。
少陽病で、特に虚証(元気、活気がない状態)の場合に用いられます。
<原典>
「和剤局」治婦人諸疾篇には、次のような記載があります。
「逍遥散。血虚労倦、五心煩熱、肢体疼痛、頭目昏重、心忪頬赤、口燥、咽乾、発熱盗汗、減食嗜臥、及ビ血熱相搏チ、月水調ワズ、臍腹脹痛、寒熱瘧ノ如クナルヲ治ス。また室女血弱、陰虚シテ栄衛和セズ、痰嗽潮熱、肌体羸痩シ、漸ク骨蒸ト成ルヲ治ス。」
この紹介している逍遥散に牡丹皮と山梔子を加えたものが加味逍遥散です。
なお、逍遥散の名の由来は、「血ヲ理メ、風ヲ消シ、逆ヲ疏シ、中ヲ和シ、諸証自ラ己ム、逍遥ノ名有ル所以ナリ」(医方集解)から来ているとされています。
<構成生薬>
柴胡(サイコ) 3.0g
芍薬(シャクヤク)3.0g
白朮(ビャクジュツ) 3.0g
当帰(トウキ) 3.0g
茯苓(ブクリョウ) 3.0g
山梔子(サンシシ) 2.0g
牡丹皮(ボタンピ) 2.0g
甘草(カンゾウ) 2.0g
生姜(ショウキョウ) 1.0g
薄荷(ハッカ) 1.0g
構成生薬とは、方剤を構成する生薬のことを指します。
その中で、メインとなる生薬を君薬(「君」は、もともと高位の人を指します)、次に重要な生薬を臣薬(家臣の臣です)、次に佐薬(「佐」は助けるという意味があります)、調整役の生薬を使薬(「使」は、仕えるといった意味があります)と言います。
加味逍遙散の場合、君薬は柴胡、当帰、芍薬となります。
柴胡は肝気鬱結を疏する効果があるわけですが、これに芍薬を加わることでその効果を強めています。
また、当帰は血病(気血水のうち、血にまつわる病態)を治す重要な生薬です。
加味は、牡丹皮と山梔子となります。
牡丹皮は、ボタン科のボタンの根皮です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%82%BF%E3%83%B3_(%E6%A4%8D%E7%89%A9)
日本産の芯を抜いたものが、もっと高品質とされています。
効能は、清熱涼血、活血散瘀、清肝火などと説明されます。
加味逍遙散に関しては、このうち清肝火としての役割が期待されており、肝鬱化火による熱感、頭痛、充血、顔面紅潮、口渇、月経不順などに対して有効です。
山梔子は、アカネ科のクチナシ、または同属植物の成熟した果実です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%8A%E3%82%B7
球形を山梔子、細長いものを水梔子と言います。
効能は、清熱瀉火・除煩、清熱利湿、清熱涼血・止血などがあります。
ご興味のある方は、診察時にご相談ください。
今後とも、医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)をよろしくお願いいたします。