今回から、躁うつ病に関するコラムを記載していきます。
かなりボリュームが多いので、複数回にわけて記載していきます。
まずは国際基準のICD-10の記述を引用しつつ、それに解説を加える形で進めていきます。
その後、DSM-5の記述の解説も検討しています。
なお、躁うつ病、うつ病の概念も精神医学の研究が進む中で、刻々と変化していますが、このコラムでは治療の実際の場で広く用いられている従来の伝統的な考え方を基本としております。
ICD-10、DSM‐5に関する説明は、以下のコラムをご参照ください。
https://www.pelikan-kokoroclinic.com/%e8%a8%ba%e6%96%ad%e5%9f%ba%e6%ba%96icd%e3%81%a8dsm/
F31.0 双極性感情障害[躁うつ病] Bipolar affective disorder
[ICD-10 序論より引用]
[解説] 「喜怒哀楽」という言葉がありますが、人間は”ロボット”ではありませんので、当然感情があります。うれしいこともあれば、時には悲しいこともあります。それはおかしいことではありません。ただ、その振れ幅があまりにも大きいと、何よりその方自身がとても精神的につらいですし、それによって日常生活、社会生活に支障をきたすことがあれば、二次的にその方の被害は大きくなります。そのようなレベルでの振れ幅があること(期間)を精神医学で「エピソード」と言います。
躁うつ病はその字が示す通り、躁+うつ、つまりテンションが上がったエピソードと下がったエピソードの両方を併せ持つものを指します。よって、その方の生涯において片方だけみられている時点では、躁うつ病と「確定」することはできず、少なくとも2回目以降でないと「確定」することはできません。
ここで「確定」と書いているのは、「推測」することはある程度可能だからです。それに関しては、後日のコラムになると思いますが記載します。
[解説] 躁病エピソードのみでうつ病エピソードがない単一性の躁病が存在するかというと、基本的には「存在しない」と考えます。
よって、初回に躁病エピソードがある時点で精神科医が診察した場合は、「必ずうつ病エピソードが今後あるはず」と考えます。
また、患者さんに躁病エピソードの治療とともに、来たるうつ病エピソードへの準備、対応の重要性をお話します。
(次回に続きます)