今回は、パニック障害について解説していきます。
ICD-10でのによる記述に解説を加える形で進めていきます。
ICD-10に関する説明は、以下のコラムをご参照ください。
https://www.pelikan-kokoroclinic.com/%e8%a8%ba%e6%96%ad%e5%9f%ba%e6%ba%96icd%e3%81%a8dsm/
F41.0 パニック障害(エピソード(挿間)性発作性不安)
Panic Disorder(episodic paroxysmal anxiety)
[解説]基本的には、突然起きるパニック発作(不安発作)が主症状となる精神障害をパニック障害と診断します。パニック発作自体は、実はパニック障害以外でも起こることがあり(例えば、うつ病など)、抑うつ気分などが主症状で、パニック発作が積極的治療の必要性が薄い程度の場合の診断名はうつ病のみとすることもあります。つまり、パニック障害の症状はあくまでパニック発作がその人が困っている症状の大部分を占め、他に症状は特にない状況で診断されます(なお、実際上の運用は、医師によって多少異なります)。
[解説]パニック発作が起きた際に感じる症状(自覚症状)はほぼ共通していて、上記の動悸(心臓のドキドキ)、胸痛(胸の痛み)、窒息感(息が苦しくなる、空気を吸えないように感じる)、めまい、失神様(くらくらする)、などが有名です。
[解説]教科書的には、上記の自覚症状によって、「このまま死ぬのではないか?」という恐怖を生じるとされます。ただ、最近は軽症のパニック障害の方も多く、その場合は必ずしもこれを伴わないこともあるように思われます。
[解説]狭義の発作という意味では通常数分間のみですが、その後も恐怖等は続きますので、全体では1~2時間程度”苦しく”なっていることが多いように思われます。
[解説]バリエーションは様々ありますが、いずれにしても頻度や程度が多く、強くなれば、それはパニック障害が悪化しているということですので、治療を受けた方がよいでしょう。
[解説]自律神経症状とは自律神経が関与した身体症状ですが、具体的には上記の動悸、胸痛、呼吸苦(窒息感)、めまい、他に手足のしびれなどです。それらと恐怖が急激に高まりますので、そこでじっとしていられるはずはなく、多くの方は座る、横になる、安心できる場所に移動するなどの行動をとります。
[解説]場所としては、バスや雑踏もありますし、最近ですと電車、特に通勤時などの満員電車や快速などの各停車駅間が長い電車、(バスに限らず)車、エレベーターなどでもみられます。当然ですが、同じようなシチュエーションは避けようとしますので、例えば電車ですと通常より早めに出勤して空いている電車に乗ろうとしたり、快速には乗らずに各停電車に乗ろうとします。エレベーターで起きた方は階段で移動されることもあります。
[解説]パニック発作は、やはり家族や恋人、友人と一緒にいると起こらないことも多く、一人で行動することが怖くなります。街中に出かけるのも躊躇してしまいます。上述しましたが、パニック発作が終わっても、その後に再度生じるのではという恐怖にさいなまれます。
診断ガイドライン
[解説]別項で解説しますが、(診断上の)別の特定の恐怖症でパニック発作が生じている場合の診断は、あくまでその恐怖症となり、パニック障害の診断をつけることは原則的にはしません(上述の説明と同じ考え方です)。
[解説]上述の動悸、胸痛、呼吸苦、めまいなどが、例えば1回のみ起きたならば、それは今後続くかどうかまだ不明のため、その時点では「起きた事象はパニック発作だが、パニック障害かはまだ不明」という診断になります。
(a)極端ですが、例えば紛争地域の戦場にいれば、常に不安、恐怖下に置かれ、自律神経症状が生じるのもある意味当然となります(よって、それを精神障害とはみなさないという意味です)。
(b)上述の通り、特定の状況下でのものは、診断上その恐怖症となります。
(c)発作と発作の間も、不安や抑うつ気分等が認められる場合は、例えば全般性不安障害やうつ病など、他の診断がより適切であるとなります。
鑑別診断