こころのペリカン便り

Column

【心療内科/精神科医の名著紹介】 『看護覚え書』(フロレンス・ナイチンゲール著)に見る「こころ」 #9

今回は、『看護覚え書』(フロレンス・ナイチンゲール著)に見る「こころ」の9回目です。

 

 

よろしくお願いいたします。

 

 

 

(P118 食事 より)

 

 

その患者にとって何が看護となるかを看護婦が知らないとなると、患者としては、それを看護婦に教えるよりは、看護婦の怠慢を我慢しているほうがはるかにましなのである。教えようとすると患者の心は乱れるし、また患者が弱っているときには、とても教えられるような状態ではない。

患者さんと医師の関係を考えさせられる一節です。

かつて、医師の態度がパターナリズム(父権主義)で、患者さんの意思や希望、価値観をあまり重要視せず、医療が行われていた時代がありました。

現在は、そのようなことはほとんどみられなくなっていると思います。

しかし一方で、医師としての立場を全放棄し、全てを患者さんの「自己責任」の下に完結させてしまうのでは、もはやそこで行われているのは医療とは呼べないでしょう。

援助職においては対象者が病める方のため、自分たちが対象者に何を提供できるのかを正確に考えられる能力が求められます。

それは、パターナリズムではなく、といって単に並列の関係でもなく、高い倫理観に裏打ちされた援助の精神、姿勢が伴う関係の上に成立するものでしょう。

この思いは常に忘れずに、日々の診療を行ってまいりたいと思います。

(次回に続きます)