こころのペリカン便り

Column

【心療内科/精神科医の名著紹介】 『看護覚え書』(フロレンス・ナイチンゲール著)に見る「こころ」 #6

今回は、『看護覚え書』(フロレンス・ナイチンゲール著)に見る「こころ」の6回目です。

 

 

よろしくお願いいたします。

 

 

 

(P64 小管理 より)

 

 

この「覚え書」に詳しく述べている要点にそって、どんなに良い看護を充分に行ったとしても、ひとつのこと—つまり小管理—が欠けていれば、言い換えれば、「あなたがそこにいるとき自分がすることを、あなたがそこにいないときにも行われるように管理する方法」を知らないならば、その結果は、すべてが台無しになったり、まるで逆効果になったりしまうであろう。

 

 

ナイチンゲールがここで説いているのは、そのようなシステムの構築が重要であるという内容ですが、「こころ」の治療現場、特にカウンセリングでもこの考え方は重要です。

 

カウンセリングは通常1回45~50分で、現在の日本では2週間に1回、多くても1週間に1回程度の頻度のものがほとんどです。

 

1週間は7日で、1日24時間ですから、7×24=168時間です。

 

つまり、患者さんに直接お会いしてお話できるのは、カウンセリングが1週間に1回の頻度でも、わずか168時間のうち1時間弱程度、実に0.6%ほどで、残りの167時間である99.4%は全くお会いもお話もできないわけです。

 

そうなると、1回1回のカウンセリングが非常に重要であることはもちろんですが、更にその間の99.4%の時間に、0.6%のカウンセリングの効果が持続し患者さんの中で変化、熟成されていくようにしていく必要があります。

 

カウンセリングには色々な流派がありますが、いずれもそこをより意味のあるものにしようとして、研究、発展してきています。

 

カウンセリングが深まっていくと、セラピストの像が患者さんの中に形成されて、99.4%の時間に”影”ながらサポートできるようになります。

 

よく偉人のエピソードで、困った場面に遭遇したとき、「そのとき、(尊敬する親や師なら)どうするか考えた」という話があるかと思いますが、それと同じことです。

 

月並みな表現ですが、我々は一人では生きていけません。

 

それは現実的な意味でもそうですし、こころにおいても同様です。

 

「こころの中に寄り添い、励ましてくれる人がいる」、これは人にとってとても大切なことなのです。

 

 

(次回に続きます)