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【心療内科Q/A】 「境界性パーソナリティ障害とアイデンティティの関係性とは?」

A.

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

以前同コラムにおいて、境界性パーソナリティ障害と性差の関連性について触れさせて頂きました。そしてその中で、境界性パーソナリティ障害の患者様は、男性よりも女性の方が多い」傾向があることも記載させて頂きました。今回は、そのこととも関連してくる内容になります。

 

 

境界性パーソナリティ障害と診断される頻度は、アメリカの調査によると、女性が男性の約3倍にのぼります。その背景として、私たちの文化の中では、女性のアイデンティティが恐らく最も変容してきたこと、特にこの50年余りが顕著であったことと無関係ではないと言われています。

 

 

社会人になり仕事をする生活から、母親になり、また再び仕事に戻る中で、否応なしに女性の方が男性に比べより頻繁に適応を期待されます。男性と同じ賃金や昇進を求めて活動をする場合でも、男性とは違った形での表現や可能性を期待されるかもしれません。

 

 

このような女性を取り巻く急速な社会の変化の中で、女性は自己認識(=アイデンティティ)をより頻繁に調整していかなければなりませんこのようなに変化し続ける世界の中で、何とか一貫性を見出そうとして懸命に努力することが、女性により求められているのが実情です。

 

 

こうした文化的変容にありながら、それでも多くの人たちは、成長する中で、何らかの一貫性と見通しのある環境を維持し、しっかりとした持続的な自己感覚を育むことが可能です。ところが、境界性パーソナリティ障害の方の場合、自らの存在に余り確信がなく、空虚なアイデンティティの感覚しか持てずにきたため、環境が変わると、それに合わせて自己の感覚を殆ど丸ごと設計し直さなくてはならない程です。

 

 

境界性パーソナリティ障害の方は、態度や気質が数分の内にも変わることがあります。その余りにもの目まぐるしさと極端さに、周囲の方々は驚かれるかもしれません。例えば、他者から外見を褒められて自分も満更ではないと感じていた境界性パーソナリティ障害の方が、そのすぐ後で、ふと鏡に映った目の下のクマを見て、「自分は醜い」とさえ感じることもあります。この例のように、特にご自身のアイデンティティの拠り所として、身体イメージに注意が向いていると、境界性パーソナリティ障害に拒食症といった摂食障害が伴いやすくなります。あるいは、強迫的なまでの整形願望(醜形恐怖)を持ってしまわれることも起こり得ます。

 

 

これらの例からも顕著なように、境界性パーソナリティ障害の方は、「自分がどうしたいか、どう感じるか」よりも、他者(周囲)からどのように受け止められるか、反応されるか。また、何を期待されているのか」によって自分自身の存在証明をされていかれます。それは、患者様ご本人にとっても、常に危うい土台の上に自分を構築していることに他ならず、時に過敏になり、時に猛烈な憤りに駆られ、時に心底から疲れ果てる…といった、感情(気分)のジェットコースターに乗せられているようなものなのです。

 

 

 

当院では、

うつ病、躁うつ病、不安障害、適応障害、

心身症、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

パニック障害、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、

月経前症候群、更年期障害、統合失調症、強迫性障害、

過敏性腸症候群、境界性パーソナリティ障害など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。