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【心療内科 Q/A】「緊張して手が震える時の漢方療法」

A.
医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

緊張や不安(不安症)と不眠(不眠症)は、中医学(漢方)的にはよく似ています。

 

ただ、一口に「不安」と言っても、幾つか種類があることは言うまでもありません。心配や思い悩み、漠然とした不安、驚いたり怯えたり…等々があります。それぞれに効果がある漢方薬は微妙に異なってきますし、勿論その患者様の体質や体格(=「証」)をしっかりと把握することも欠かせません。

 

 

では、次のような患者様からの訴えがあった場合はどうでしょうか?

 

 

『飲食店でバイトを始めたのですが、オーダーを取る時やフードをテーブルに置く時に、手が震えてしまいます。何だか注目さえているような感じがしてしまうのです。お客様は気にしていないと分かっていても、どうしても緊張してしまいます』

 

 

◆「抑肝散(よくかんさん):緊張して手が震えるのは、中医学(漢方)では“風”の仕業であることが考えられます。よって、まずは「熄風(そくふう)」を主体に考えていきます。「熄風(そくふう)」とは「めまい、震え、痙攣などの状態を改善すること」を指しています。まずは、熄風薬の代表である生薬「釣藤鈎(ちょうとうこう)」を主成分とする「抑肝散」が合うことがあります。もしも舌診にて、舌苔が厚くついていたり、胃の調子が悪かったりする際には、「水滞」の証がある可能性を考慮し、利水作用を持つ生薬である「陳皮(ちんぴ)」と「半夏(はんげ)」が加わった「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」の方が向いていると考えられます。

 

 

◆「釣藤散(ちょうとうさん)」:上述の「釣藤鈎」と「菊花」を含み、熄風(そくふう)をより強く行います。血圧が余りにも低い場合には向きませんが、やや気虚気味という程度であれば、選択肢に入ってきます。熄風効果だけを考えるのであれば、抑肝散よりも効果は高いです。抑肝散の使用には、多少の「肝気鬱結(かんきうっけつ)」があることが前提になるからです。「肝気鬱結(かんきうっけつ)」とは「精神的ストレスによる諸症状」を指しています。例えば、落ち着かない、イライラする…などはその典型例でしょう。「釣藤散」と同系列に上げられるのが「七物降下湯(しちもつこうかとう)」という漢方薬ですが、こちらは「血虚」タイプの方に向いていると言えるでしょう。

 

 

◆「抑肝散」+「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」:釣藤鈎による熄風で余り効果が見られなかった際、「竜骨(りゅうこつ)」や「牡蛎(ぼれい)」による熄風と、「柴胡(さいこ)」による「疏肝解鬱(そかんげうつ)」を検討します。「疏肝解鬱(そかんげうつ)」とは、「肝気鬱結(かんきうっけつ)によるイライラ・憂鬱・怒りっぽさ等々の諸症状を治療する方法」のことを指しています。そして、柴胡加竜骨牡蛎湯でカバーできない部分を抑肝散が補うという処方になっています。

 

 

このように、中医学(漢方)では、一見すると同じ症状に見えたとしても、患者様の体質(「証」)によって異なる漢方薬が処方される、「同病異治(どうびょういち)」の考え方に拠ります。ですので、自己判断で、薬局などの市販の漢方薬を選ぶよりも、きちんと医師に診てもらって処方を受ける方が、ご自分に最適な漢方薬が見つかり易くなることは間違いないでしょう。

 

 

なお、これら不安や緊張に関する漢方薬(漢方療は、当院のような心療内科クリニックにおいて、保険適用で処方することが可能です。ご希望の患者様は、診察時に医師の方にお申し出下さい。

 

 

当院では、
不安症、睡眠障害(不眠症)、自律神経失調症、
うつ病、躁うつ病、適応障害、心身症、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
パニック障害、月経前症候群、ストレス関連障害、
統合失調症、強迫性障害、過敏性腸症候群など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。