こころのペリカン便り

Column

【心療内科/精神科名著紹介】 『精神病者の魂への道』(シュヴィング著)に見る「こころ」 #7  ~耳を傾ける~

今回は、『精神病者の魂への道』(シュヴィング著)に見る「こころ」の7回目です。

 

 

(引用元は G.シュヴィング著 小川信男・船渡川佐知子共訳 (1966) 精神病者の魂への道 みすず書房 です。)

 

よろしくお願いいたします。

 

 

 

P24 「関係性はいかにして確立されるか」 より

 

症例 ドラ 二二歳

 

空想は、病者が自身に抱いている心的な現実性の価値ゆえに、病者にとっては物質的な現実性(フロイト)がもつのと同じ効果をもっている

 

初診の患者さんで、時折診察でお話されることがきちんと信用されるだろうかと不安を覚えていらっしゃる方がいます。

無理もないご不安だと思いますし、あるいは、もしかしたら以前にどこかでお話された際に信用されなかったという悲しいご経験があるのもかもしれません。

 

治療者は、患者さんのお話を基本的にはそのままストレートに受け入れます。

これは、精神分析では「平等に漂う注意」、来談者中心療法では「無条件の肯定的関心」などにつながる態度です。

前者は、精神分析の創始者であるフロイトが治療者の基本的態度として述べたもので、「先入見や価値判断を保留し、患者の語る連想内容のいかなる要素にも偏らず、自らの無意識的活動を可能な限り自由に働かせ、患者の無意識的な空想や動きを「自分自身の無意識を受容器官として」傾聴しようとする」ことを意味します(P894 現代精神医学事典 第1版 弘文堂 より)。

後者は、来談者中心療法の創始者であるカール・ロジャーズが述べたもので、クライアント(患者さん)に対して、治療者が無条件的に受容的、共感的、積極的態度を示すことを差します。

 

これは、カウンセリング、ひいては対人援助の目指すべき理想形ですが、実践は容易ではありません。

しかし、これまでもご紹介している通りシュヴィングはこのレベルに到達していたと思われ、改めて彼女の非才さんに脱帽する思いです。

 

 

 

(次回に続きます)